ある企業から、退職予定者への賞与を低くしても問題ありませんかとの相談を受けました。給与とは異なり、賞与は会社の業績や従業員の人事考課を踏まえて、経営者が支給条件を裁量によって決定することができますので、基本的に減額しても問題ありません。過去の裁判例でも、従業員の「将来の活躍に対する期待」を要素として加味することを認めています。
ただし、あまりにもドラスティックに減額してしまう場合、公序良俗違反に該当するとして無効とした裁判例も散見されます。例えば、退職する社員への報復的措置や退職の自由を著しく制約する結果をもたらすと判断される場合には注意が必要です。賞与の支給条件は会社の裁量によって任意に設定できるとしても、従業員から根拠を求められた場合に、まったく説明できないようでは後々紛争に発展するリスクとなりますので、ある程度の基準や決定要素を準備しておくとよいでしょう。
弁護士 市村陽平