将来の相続のことを考える際、相続税の基礎控除との関係で孫を養子にするかどうか検討される方が多いと思います。実は、この養子縁組について、相続税だけではなく、遺産分割との関係でも大きな影響をもたらすことになります。
私が取り扱った事件では、孫と養子縁組した祖母が亡くなり相続が発生したのですが、その前に孫の母(祖母の子)が亡くなっていたため、孫は養子の立場だけでなく、母の代襲相続人の立場も兼ねる状態になっていました。このような状態で、母の兄弟とどのように遺産分割すればよいのか相談に来られたのです。普通に考えれば、孫は一人の人間なのでひとつの立場しか主張できないようにも思われるのですが、実務では、このような場合、養子と代襲相続人の立場を兼ねることができるとされています。すなわち、2人分の相続権を有することになるのです。
上記事案では、関係者に法的な考え方を説明し、納得していただけたので、スムーズに遺産分割協議をすることができました。もし、一人分としての権利で分割協議が成立した後に相談に来られていたら、協議を覆すのは困難だったかもしれません。
弁護士 市村陽平