ご相談事例

格差是正のための不利益変更について


正社員と非正社員の待遇格差については、2018年に最高裁でハマキョウレックス事件と長澤運輸事件が同日に判断が示されて以降、大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件、日本郵便事件と立て続けに重要判決が出てきました。そして、労働法の分野では、セミナー等でこれらの判決を比較しながら、どのような手当の不支給が違法となるのかなど解説がされてきました。

そんな中で、「正社員の休暇削減 日本郵政側が提案 「不合理な格差」判決受け」との見出しで興味深い記事を発見しました(朝日R4.1.7朝刊)。これによると、日本郵政グループが最高裁で不合理と認定された労働条件について、格差を縮めるべく、正社員の休暇を減らす提案を労働組合に提案したそうです。今まで正社員のみに認められていた休暇を一部削減して、その分を期間雇用社員に付与するという内容で、正社員にとっては不利益変更になります。

さて、この格差是正を労働組合が受け入れるかどうか。これまで世間一般では、企業内労働組合は正社員のための組織として位置付けられてきましたが、この先、非正社員の権利利益も擁護できる存在となれるのか大きな試金石となりそうです。もし、組合が会社提案の格差是正措置を拒絶した場合、その先の展開としては、会社による就業規則の変更に対して、正社員が不利益変更を主張して裁判で争うという流れが予想されます。そのとき、裁判所は、自ら不合理であると認定した格差の是正と、一部正社員の既得権益の保護のどちらを優先させるのか。大変興味深い判断となりそうです。

 

弁護士 市村陽平


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