ご相談事例

労務管理における個人情報の取扱いについて


本年4月1日から改正個人情報保護法が施行されています。会社が保有する従業員の個人情報も同法の保護の対象となっており、その取扱いには注意が必要です。

たとえば、退職者の転職先や予定先に当該退職者の個人情報を提供しても問題ないかどうか。「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平成24年5月)では、退職者の個人情報を提供することは第三者提供に該当するため、あらかじめ本人の同意を得なければならないと説明されています。もっとも、就業規則において提供先が明示されている場合には、職務歴等の合理的範囲であれば個別の同意がなくとも提供可能という理解も可能です。

従業員採用の場面での個人情報の取り扱いについてもよく問題となります。まず、採用応募者から得た個人情報の利用については、職業安定法指針により、原則としてその収集目的の範囲内に限られます。不採用者の個人情報は、採用活動の上で必要とされなくなったときは、写しも含めて、その時点で返却、破棄又は削除を適切かつ確実に行うことが求められます。仮に利用目的達成後も保管するのであれば、継続して安全管理措置を講じなければなりません。

最近よく相談を受けるのが、社内でどの程度であれば社員の情報を共有できるのかという点です。災害に備えて緊急連絡網を整備する、新製品や保険の販売活動の目的で従業員名簿を利用するなど目的は様々ありますが、基本的理解として、事業者内での閲覧・提供は第三者提供ではないため、個別同意は原則必要ありません。もっとも、同一企業内であっても収集目的とは関係のない業務に利用することは目的外利用にあたるため、たとえば人事管理上収集した従業員名簿を営業活動等のために用いることは、個別同意がない限り許されないと考えられます。

 

弁護士 市村陽平


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