ご相談事例

労働時間の切り捨てについて


外食大手すかいらーくホールディングスが今年の7月1日に、パートやアルバイト社員に支払う賃金の計算方法について、5分単位から1分単位に切り替えるようです(R4.6.9朝日朝刊)。記事によれば、同社はこれまで5分未満の労働時間を切り捨てていたが、過去2年に遡って切り捨てられた分の賃金を支払うことになったようで、対象は約9万人、費用は計16億~17億を見込んでいるとのことです。

労働者への賃金の支払いについては、労基法の賃金全額払の原則や通達により、1分単位で計算しなければなりません。最近では、タイムカードと労働時間の集計が連動するシステムを導入する会社が増えてきており、このシステムでは始業時間と終業時間を打刻すれば自動的に一日の労働時間が集計されます。しかし、実態としては、タイムカードの集計を手作業で行っている会社や、従業員の勤怠管理を自己申告制にしている会社もいまだ多く、大多数の会社が厳密に1分単位で労働時間を計算できていないのではないでしょうか。ちなみに、前述の記事では、同じファミレス業界のココスは15分単位で計算していたが、昨秋から1分単位に切り替えたと紹介されていました。

このように、一日あたりの労働時間の集計は1分単位でしなければなりませんが、1か月分を集計する際には30分未満の切り捨ては認められています。他にも賃金の計算方法については、どの手当が基礎賃金に含まれるのかや割増率の考え方など争いになる問題が少なくありません。長年の社内慣行が法的に誤っていると後々大きなトラブルにも発展することから、定期的に労基署や専門家に確認をしてもらうとよいでしょう。

 

弁護士 市村陽平

 


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