近年、「同一労働同一賃金」という言葉を耳にする機会が多くなりましたが、これに関連して、少し前に、日本郵便に勤務する非正規社員約150人が、正規と非正規の間の賞与等支給についての格差が違法であると主張して、全国6カ所の裁判所に一斉提訴したという報道がありました。
そこで今回は、2020年4月から施行されるパートタイム・有期雇用労働法について紹介したいと思います(中小企業に対する適用は2021年4月になります)。
この法律は、これまで別々の法律で定められていた、パートタイム労働者(短時間労働者)と有期雇用労働者の待遇差についての規定を一本化し、主に、①不合理な待遇差の禁止、②労働者に対する待遇に関する説明義務、③パート・有期から通常の労働者への転換推進措置、④行政による事業主への助言・指導、といった内容について改正を加えています。
その中でも、とりわけ注視されているのが冒頭でも触れた、正規・非正規の待遇差に関する規定(①)です。実際のところは、今回の法律が成立する前から、裁判上では、どこまでの待遇差であれば「不合理と認められる」のかという点に関し、いくつもの事案で判断が示されており、新法施行後も最高裁で示された判断基準を中心として条文解釈がされていくと思われます。
もっとも、新法では、有期労働者についても、「均等待遇」が必要な場合と「均衡待遇」でよい場合に分けられるようになりますので、改めて、当該社員の「職務の内容」や「職務内容・配置の変更の範囲」について日頃から意識して労務管理をしていくことが重要になりそうです。
また、新法施行後も、引き続き、高年者の定年後再雇用の事案であるとか、無期転換後の非正規労働者の事案については、通常の労働者との関係でどこまでの待遇差を設けるのか非常に悩ましい問題が残ります(やや話が細かいですが)。
今後も、判例の動向に注意を向けながら、有益な助言・対応ができるよう準備をしていきたいと思います。
弁護士 市村陽平