今月16日に最高裁で事業場外みなし労働時間制の適用の有無に関する判決がありました。この事案は、外国人技能実習生の指導員として稼働していた被上告人(原告)について、「労働時間が算定しがたい」と言えるかどうか争われていた事件で、原審の福岡高裁ではみなし労働時間制の適用を否定したのに対し、今回の最高裁判決では適用の余地があるとして、原審判決を破棄して審理を福岡高裁に差し戻しました。
今回の事件で、最高裁がポイントとして掲げている事実関係としては、①当該従業員の担当業務が多岐にわたるものであった、②当該従業員が自ら具体的なスケジュール管理をしており、所定の休憩時間とは異なる時間に休憩をとることや自らの判断で直行直帰することも許されていた、③会社との関係で随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることもなかった、という点です。判断の前提となる規範や判断要素こそ従前の最高裁判例の枠組みを維持しているものの、これらの事実関係を殊更指摘している判決文を読むと、今後、裁判でみなし労働時間制の適用が認められる対象業務が広がりを見せるかもしれません。
この点、いみじくも、林道晴裁判官の補足意見の中で、「いわゆる事業場外労働については、外勤や出張等の局面のみならず、近時、通信手段の発達等も背景に活用が進んでいるとみられる在宅勤務やテレワークの局面も含め、その在り方が多様化していることがうかがわれ」と指摘されていることからしても、古くから議論されてきた事業場外みなし労働時間制が新しい局面に入ってきたのではないかという気がしています。
弁護士 市村陽平