ご相談事例

相続法改正後の遺留分制度について


2018年7月に大きく改正された相続法制ですが、近頃、改正相続法施行後の相続開始事案についての相談や依頼を受ける機会が増えてきました。その中でも、特に法改正の前後で、①財産の価格の計算方法や、②請求権行使による法的効果をめぐって対応が変わってくるのが遺留分をめぐる紛争です。

これまで、①遺留分を算定するための財産価格の算定方法について、一部の相続人に特別受益(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与)があった場合には、その時期を問わず遺留分請求の対象財産に算入されていましたが、改正後は、原則として相続開始前の10年間に限られることになりました。また、②請求権行使による法的効果として、複数の対象財産がある場合、従前、財産ごとに遺留分額に応じた権利が帰属する構成がとられており、とりわけ不動産や株式が多いときには共有状態となってその解消のために共有物分割の手続を経なければならないこともありましたが、改正後は、すべて金銭評価して支払いを請求することができるようになりました。

法改正前から、遺留分請求事件というのは、請求される側にとって、なかなか防御に有効な手段がなく、難しい事件の代表格でしたが、今後、遺産に占める割合として不動産が多い事案などでは、上記②の改正によってまともに金銭の請求を受けてしまいますので、換価困難な不動産の遺贈を受けた相続人などはますます大変な立場に置かれることが予想されます。被相続人の死後に、遺産をめぐる紛争に発展させないようにするためにも、遺言書を残す場合には、しっかりと遺留分の計算も頭に入れておかれるとよいでしょう。

 

弁護士 市村陽平

 


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