ご相談事例

抵当権が設定された不動産の評価について


遺産分割の際、よく問題となるのが、抵当権等の担保に供された不動産が遺産に含まれる事案です。設定されている被担保債権が被相続人の債務である場合は、同じ額だけ債務として控除されるため、さらに不動産の評価を減額する必要はないのですが、第三者の債務を担保するために抵当権が設定されている場合(物上保証)には、評価が難しくなります。

担保に供された不動産を取得することになる相続人にとっては、いつ担保権が実行されるかわからないので、被担保債権分を減額してもらいたいという主張になります。これに対し、担保付き不動産を取得しない相続人としては、債務を負担している第三者が支払いをすれば不動産はそのまま維持できるのだから減価する必要はないというのが一般的な反論です。

この点、私の経験からすると、調停や審判になった際、被担保債権の存在が考慮されるケースはかなり少ないのではないかという印象をもっています。もし、減額評価されるとしたら、債務者の履行状況が悪く競売が見込まれる蓋然性が高いことや主債務者に求償しても返済を受けられる可能性が低いことなどを積極的に立証できる事案に限られるのではないでしょうか。

他にも、保証債務や連帯債務をどのように評価するかなど遺産分割には悩ましい問題がついて回ります。法律問題には正解がないと言われたりもしますが、特に相続をめぐる紛争では、いまだ明快な答えが出ていない論点がたくさん残されているというのが実情なのかもしれません。

 

弁護士 市村陽平


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