近頃、寺院の檀家さんの遺言書を作成する機会に、檀家さんと寺院との間の死後事務委任契約書の作成に携わることが増えてきました。死後事務委任契約とは、自らが亡くなった後の葬儀や供養、一定の財産管理といった手続についてあらかじめ第三者に委託する契約を意味します。
単身世帯の増加や、近い将来直面する多死社会を迎えるにあたり、自らの死後に不安を抱く方が増えてきています。これまで、寺院側も檀家さんの不安に寄り添うべく、希望を聴き取り供養などを担ってきたようですが、本人の死後に事情を知らない親族との間でトラブルもあったようです。そこで、私から寺院に対して、檀家さんの生前に死後事務の範囲を確認して書面で明確に残しておく死後事務委任契約を助言したところ、積極的に採り入れてもらえるようになりました。
死後事務委任契約を取り交わすにあたって、生前に費用を預託することが難しいという場合には、私が遺言執行者となり、不動産等の遺産を換価した上で寺院に遺贈するという遺言書を作成することもあります。ただし、事の性質上、寺院-檀家-弁護士の間に日頃から強い信頼関係がないとなかなか結べない契約だとは思います。
弁護士 市村陽平