ご相談事例

遺留分算定の基礎財産に加算される贈与について


私が取り扱う事件の中でも、遺留分に関する紛争は常に数件抱えている状況です。遺留分事件では、相続時に残された財産だけが対象になるケースでは比較的早期に解決できますが、生前に多数の贈与がされている場合には複雑になってきます。

遺留分の対象となる生前の贈与については、2018年に成立した改正相続法によって、基本的に①相続開始前「10年間」の②特別受益(※遺産の前渡しに相当する贈与)に限る旨変更されました。これによって、期間に制限が加わるとともに、あらゆる贈与が含まれることもなくなり、これまでより紛争の長期化が避けられる傾向にあります。特に②特別受益に限定された点については、事件によっては数万円単位のお小遣いレベルの贈与も争われていたことからすると大きな見直しといえるでしょう。

もっとも、どのような贈与が特別受益に該当するかについては引き続き明確な線引きがされていないため、継続的な生活援助の場合などには特別受益性をめぐって激しい争いが繰り広げられるのが現状です。また、法文上は、相続人が無断で被相続人の預金等の財産を引き出したのか、それとも被相続人の意思で預金等の財産を贈与したのかによって遺留分の基礎になるか否かを区別していることから、当事者の主張内容次第では事件が複数にまたがることも多々あります。

このように、日頃、泥沼の事件を多くみているだけに、遺言を作成する際に、何とか遺留分の紛争を回避できないか思案するのですが、なかなか有効な遺留分対策が見当たらないのが悩みどころです。

 

弁護士 市村陽平


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