ご相談事例

遺産共有関係の解消方法について


世の中に存在する共有状態には、相続により共有関係が生じた場合(遺産共有)と、売買や贈与など自らの意思で共有関係が生じた場合(遺産共有以外の共有)とに大きく分けられます。法律上の権利関係としては同じ共有であっても、話し合いでまとまらない場合の共有関係の解消方法について、前者は家庭裁判所での遺産分割、後者は地方裁判所(簡易裁判所)での共有物分割という形で、それぞれ異なる手続で解消しなければならないと理解されてきました。

遺産共有に関して実務でよくあるのが、相続人が多数の場合、家庭裁判所で調停を申し立てると出頭しない当事者や、金額でまったく折り合いがつかない当事者などがいて、どうしても事件が長期化してしまうという問題です。これを回避するには、民事訴訟で共有物分割をするのが最善なのですが、判例上、一部でも遺産共有が生じている共有関係の解消は家庭裁判所での遺産分割手続を先行させなければならないとされていたため、これまで家庭裁判所で相続関係を確定させてからでないと共有物分割訴訟を提起できませんでした。

ところが、令和3年民法改正によって、いくつかの要件を満たす必要はあるものの、相続開始時から10年が経過した場合、遺産共有持分と遺産共有以外の共有持分が併存する事案では、民事訴訟による共有物分割が可能となりました。現在、弊所で相談を受けている事案でも、この新制度を使って共有関係の解消ができないか検討中であり、紛争解決までの時間短縮になれば他の案件でも積極的に活用していきたいと考えています。

 

弁護士 市村陽平


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